情報大洪水の時代(その17)
「2次試験は形式だけで、皆が合格している」
「1次試験が勝負。学科試験だから」
簡単に言うと、私はお父さんからそう聞いていたのだが、
推薦入試の2次試験の合格発表では、
「不合格」
「いったいどうなっているんだ…」
事態が呑み込めないのは私だけではなかった。
生徒だけでなく、生徒のお父さんも錯乱状態になった。
後で聞いたのだが、
推薦した高校の担当の先生や関係者の人たちまでも、
全員が困惑していたらしい。
「当校としましても…、このようなケースは初めてでありまして…」
「すみません、本当にどう対処していいかまったくわからないのです…」
生徒本人もショックを受けていた。
地元国立大学医学部医学科の受験指導を中断してまで、
完全に私立大学医学部医学科の受験勉強に振り切って、
後には戻れない「不退転の決意」をして、
無謀な学習計画を進めながら(運よく?)勝ち取った、
1次試験の合格。
1次試験に受かっていたがためにショックは大きかったのだ。
1次試験合格者は2次試験でも全員合格するという、
その高校の今までの実績を覆す不合格という結果。
すべてがなくなった。
「先生、うちの子どうしたらいいんですかぁ…?」
「…」
「先生、今からでも国立大医学部受験…間に合いますよね?」
「…、すみません、今からでは間に合わないと思います」
「先生、先生…、やっぱり、そうですか…」
「何でこんなことになったのですかね…」
私の最後の言葉を聞いたかどうか定かではなかったが、
そのお父さんは立ち上がって言った。
「このままでは納得がいかない、学校に対して!!!」
(続く)