塾講師のやる気の源とは?(その5)
それから2時間がたった。
私が指導室に戻ると問題を解き終わっていたAくんが、
こちらを不安そうな目で見てきた。
見てきた…というよりも、
ずっとこちらを見つめている感じだ。
私からの声かけを待っているような感じだ。
「あ~、問題は解き終わったんだよね?」
「あ…、はい…」
座っていたAくんが自主的に立ち上がった。
「じゃあ結果を見せて!」
Aくんが、ササっと私の前にやってきた。
Aくんから答案を受け取り内容の一部始終をチェックした。
「(こ、これは…!)」
内心とは裏腹に動揺を見せずにAくんにゆっくりと話しかけた。
「ふぅ…。まあ仕方がないか、これができるようにがんばるか」
「え、…あの、これ…、俺は解けるようになるんすかね?」
「はぁ?」
「いや、あの…。結構難しかったというかなんて言うか…」
「知らないよ! 今できるかどうかじゃなくて試験日までに…」
「いやいや、そうじゃなくて!…ですね…あのっ、本当に…(モゴモゴ)」
「え、何? 聞こえないよ!」
「いえ、あの、これはさすがに無理じゃないのかな~と思いまして…」
ちょっとかわいい感じ?でこちらを見つめてきたAくん…。
「はぁ? きみが選んだ道なんだろ!?」
「いや、あの、こんな道…選ばなければ良かったのかな~なんて…」
「かな~なんてって…、おい!(苦笑)」
「いや、まじでですね、解きながらあまりにもできなくて…」
「だから?…(苦笑)」
「ほんっと、途中で俺マジに泣きそうになったっていうか…」
「で、どうしたいの!?」
「いや、どうしたらいいんですかね、俺…」
「…、元に戻したら?」
「え、今、何ておっしゃった…のでしょうか?」
「元にっ!! 戻したらっ!? と言ったんだけどっ!」
「お~! まじで本当にいいんすかっ!あざ~すっ!」
「…ったく…」
「ああっ!!」
「はぁ、今度は何だよ!?」
「今、ヤバいことに気づきましたぁ!!」
「(気づくなっ、ちゅ~のっ!)」
(続く)