塾長の考え

塾長の考え(自立型の指導)②

「人を見ない、数字を見る」

 

23歳で塾長になった私は、

 

「成績が上がらなければ塾ではない」

 

という言葉をチラシに書いた。

 

本心だったし、今もそう思っている。

 

しかし、

 

この言葉をおもしろくないと思う、

 

他の塾長たちもいたのは事実だ。

 

「なにを生意気な」

「大学卒業したばかりで偉そうに」

「もともとある塾をなめているのか」

 

このように言われた。

 

彼らからすれば私が怖いわけではない。

 

だから平気で聞こえるように言う。

 

「えらい自信だな…」

「若いって、いいなぁ」

「お手やわらかに頼むよ」

 

そう言ってくる塾長たちもいた。

 

この方たちとはいつどこで会っても、

笑顔であいさつできたし、

実際にやさしく接してくれた。

 

実際に、

いっしょにご飯を食べたときは、

 

「きみは若いんだから食べなさい」

 

自分のとんかつ定食のとんかつ、

それから3切れ分を私の皿に、

 

「ほら」

 

とくれた塾長もいたし、

 

私の趣味が将棋だとわかったら、

 

「遊びにおいでよ、一局しよう」

 

と言ってくれて実際に私が行ったり。

 

将棋の対局をしながら、

 

「今は若くても人生はあっという間だよ」

 

とか、

 

「早く結婚しなさいよ」

「1人じゃ大変だよ」

「夜食はひかえめにね」

 

などと業界の先輩として、

温かいアドバイスをくれた方もいた。

 

あれから30年が過ぎたのだ。

 

「数字だけを見て全部判断する」

「テストに出るところを暗記させる」

「とにかくテスト範囲を3回繰り返す」

「生徒が自宅で勉強するはずがない」

「少しでも多く塾に来させれば勝ち」

 

成績を上げたくてしかたがなかった私は、

がむしゃらに毎日頑張った。

 

なるべく休まないで働いた。

 

 

「生徒の笑顔を見るのが楽しかった」

 

これは事実だったが、

 

塾は生徒の成績を上げるところだ!

 

という強烈な信念が、

毎日はたらく最大の原動力だった。

 

毎月増える塾生の自転車の数を、

こっそりと数えに来る塾長さんがいて、

 

「いったい君は何を塾でやっているの?」

 

と真顔で聞かれたこともあったし、

 

別の塾長さんからは、

 

「いずれ俺たちを全部つぶすつもりだろ?」

 

と笑いながら冗談っぽく言われたりもした。

 

小学生はとくに何もない。

 

中学生の場合は学校の成績が、

「番数」という形で出てくる。

 

だから、

 

「番数」が上がる指導をすれば、

いくらでも生徒は集まってきた。

 

「自分のやっていることは正しい!」

 

そういう確信しかなかった。

 

23~24歳のころの話。

 

やはり、

 

まだ考えが単純かつ浅はかで、

バカだったと言える。

 

(続く)

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