塾長の考え

塾講師のやる気の源とは?(その6)

「で、何に気づいたのっ?」

「もう無理かもしれないです…あ~っ!」

「何がどうした?」

「実はもう親が願書を書いていて…」

「何!? それで?」

「いや、わからないっす、もう出したかも」

「ダメじゃん、それじゃもうダメじゃん」

「今から電話かけてきていいっすか?」

「お母さんにってこと?」

「はい」

「じゃあ今すぐにっ!」

「はいっ!!」

 

塾内の非常階段のところに行って、

電話をかけている様子のAくん。

鉄製の重たい扉の向こうで話をしている。

普通ならば聞こえてこないはずの声が、

ところどころこちらに聞こえてくるほどの、

音量の大きさ…。

 

しばらくして、

小走りに私のところへ戻ってきたAくん。

「塾長っ、大丈夫でしたっ!」

「おお」

「ギリギリセーフっす」

「それならいいんだよ」

「で、俺は今から何を?」

「あ、ああ、前回の続きだよ」

「前回の続きっすね」

「そうそう」

「わかりましたっ!」

 

それから2時間後。

 

「塾長っ、終わりましたっ!」

「お、うん」

「で、次は何を?」

「…、次はこれだよ」

「わかりましたっ、て、これは…!」

「何、それをやるんだよっ!」

「え、でも…これは…」

 

困惑した顔のAくん。

たまたまそばにいた予備校生のBくんが、

中身をちらっと見て微笑。

 

「塾長、またやってんなぁ」

 

そんな感じの表情でこちらを見て微笑。

 

Aくんはというと、

Bくんと私の顔を交互に見て、

手元のプリントの問題を再度見直した。

 

「え、これをマジでやるんすか??」

 

 

(続く)

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