ある高校の先生との会話で(完結編)
悪夢のような前期試験(2009年3月)の合格発表日。
その生徒からの合格の報告はとうとう来なかった。
そして1ヵ月後、
私はその生徒の母校の合格者の掲示板を確認しに行ったが、
その生徒の名前はどこを探しても見当たらなかった。
「何がスーパーティーチャーだよっ!ふざけるなっ!」
そう言って私を慰めようとしてくれたスタッフもいたが、
私の心の中では新たな決意も生まれていた。
「今回のようなことは今後2度とあってはならない」
それから1年が過ぎた。
「塾長~、こんにちはっ!」
「おう、いらっしゃい、まあ入れよ、よく来たね」
2010年当時、横浜市立大に通っていた元生徒が遊びに来た。
宮崎に帰ってきたので今から行っていいいですかと事前に連絡があったのだ。
「久しぶりだね、どう、元気にしてた?」
「はい、元気っすよ、塾長もお変わりないようで(笑)」
「そうかい、フフフ」
「今日はとっておきのサプライズがあるんですけど(笑)」
「え、サプライズ?何だよ?」
この瞬間、その彼の後方からもう1人の男性がすっと出てきた。
「こんにちは、塾長、お久しぶりですっ!」
「おおおっ!」
そこに現れたのは紛れもなく1年前のその生徒だった。
「おおお、元気にしてたか!?」
「はいっ、おかげさまでっ!」
「何だよ、受験してその後どうなったんだよ?」
「はい、その節はご迷惑をかけました。今回〇〇大学医学部に受かりました!」
「え~っ、今年また受験してたのっ!? う~ん、そうだったんだ…」
「はい、実は昨年は前期で落ちまして後期試験で〇〇大学の歯学部に受かったんですよ」
「あ~、なるほど…そうだったんだ、それで?」
「で、そこの大学に通いながらずっと仮面浪人してました!」
「仮面浪人…!?よくやったなぁ、大学行きながらだから大変だっただろうに…」
(注:仮面浪人とは大学生でありながら翌年の受験を目指す者のこと)
「いや、そうですけど、俺ずっと塾長から習った学習方法でやったんですよ」
「うっ…、そ、そうなの?」
「はい。ここで学んだ学習方法を使ってずっと地道に頑張りました」
「そうか…、君は偉いなぁ…、よくやったよ」
「今年のセンター試験は785点でしたよ、何と去年よりも点数が取れました!」
「785点!すごいじゃないか!」
「ありがとうございます、これも塾長のおかげです」
「いや~、それはすごいな~」
「あの~、すみませんでした、去年は…」
「もう、いいよ、そんな過去のことは」
「今度こそ絶対に合格して塾長に謝りに行こうと思って1年間がんばってきました」
「えっ、そうなの…」
「はい、それが原動力でした、だから頑張れました!」
「…、学力だけでなくヨイショのレベルも上がったんだね」
「いや~、そんなことないっすよ」
「ハハハ。ところでお母さんは?」
「めっちゃ喜んでくれています、すぐに塾長のとこへ行けって言ってくれて」
「おおっ…、そうだったんだ。そうか、そうか…」
その後しばらく談笑してその元生徒(たち)と別れた。
そしてその生徒のお母さんから電話があった。
息子さんがずっと仮面浪人していたこと。
昨年の出来事を反省して前向きに1年間頑張ったこと。
北斗塾予備校で基礎学力を構築出来ていたので今年も受験できたこと。
そして…医学部に合格できたこと。
塾長(私)に報告に行けて良かったと言って自宅に帰ってきたこと。
「これからもうんと勉強頑張って立派な医者になるよ」と、
母である自分に笑顔で言ってくれたこと。
そして最後に、
北斗塾予備校と出会えて本当に良かったと思っているいうこと。
その瞬間、本当の意味で自分の中のわだかまりがなくなった。
ありがとう、〇〇くん、そして…そのお母さん。
(終わり)