ある高校の先生との会話で(完結編)のおまけ
テーブルの上に置かれた資料をじ~っと見つめていた高校の先生。
彼女の肩書は「スーパーティーチャー」。
「だいたい前年度に650点くらいの点数を取っている生徒が医学部志望ですね」
「はい、そうですね」
「この490点から医学部に受かった生徒って本当ですか?」
「本当です、〇〇〇の〇〇科出身の生徒です」
「へ~、そんなことあるんだぁ…」
「そのケースに関しては、その生徒がすごかったんですよ」
「それにしても490点からはすごいですね」
「その生徒は特別ですが、うちのレベルは620点からの翌年合格です」
「620点あれば合格できるんですか?」
「今のところのうち(予備校)の実力ではそうです」
「それでもすごいかも…」
「700点以上の点数を取っている生徒が来れば翌年は合格ですよ」
「確かに…、そうみたいですね」
「それは比較的簡単なことです、九大医学部とか東大理Ⅲでない限りは」
「へ~ぇ」
「700点以上の点数の生徒なら全員翌年合格ですよ、普通であれば」
「そんな簡単に…受かるんですか医学部医学科に??」
「地方国立大学であれば」
「え~、そうなんですか、すご~い」
「700点以上の点数の生徒は楽勝ですよ、そもそも指導が」
「へ~、そうですか、いや、確かにそうかもしれないなぁ…」
「ほとんど他の予備校の医学部合格者も前年度は700点台でしょう」
「ああ、なるほどね」
「700点以上の点数を取っている生徒は特待生でしょう、どこでも」
「予備校は…そうなんでしょうねぇ…」
「ここ10年間くらいはずっとよその予備校を勧めてきたくらいですよ」
「え、700点台の生徒が先生のところに来たら…ですか?」
「はい、医学部志望の生徒なら全員そうしてきました」
「ええっ!? で、その生徒さんたちの結果は?」
「みんな合格しているようです、他の予備校のHPに載っていますから」
「えっ、載っているんですか?」
「はい、堂々と載せているようです。『どうだ!』と言わんばかりに」
「あの、…先生のところは、どこを目指している予備校なんですか?」
「他の予備校で合格できなかった生徒を来年受からせる予備校ですよ」
「ほ~う…」
「700点台の生徒が来たら医学部に合格させるのは難しくないですから」
「まあ、言われてみれば、そうかもしれないですよね~」
「700点台の生徒を翌年合格させても何の自慢にもなりませんよ」
「今年はどんな生徒さんたちがきているんですか?」
「いろいろですね、492点の生徒も医学部目指していますし」
「よ、492点ですか、それはちょっと医学部には…」
「その生徒に関しては、今回はやってみせますけどね」
「ええっ…???」
いろいろ大きなことをその先生に言ったが全部本当であり事実だ。
私の目の前にいたスーパーティーチャーは熱心に話を聞いてくれた。
来年の結果を楽しみにしているのでまた教えてくださいね、
そのように言われながら私はその場を後にした。
きっと私の目の前に現れたスーパーティーチャーも、
「あの生徒」の目の前に現れたスーパーティーチャー達も、
おそらく「生徒第一」で指導をしてきた先生達なのだろう、
だからこその「スーパー」という肩書なのだろう、
そういう意味ではわれわれと同一種類の先生なのだろう、
そんなことを思うと、
ちょっとだけ、
ほんのちょっとだけ、
帰り路の自分の足取りが軽くなったような気がした。
(おまけ…終わり)