情報大洪水の時代(その15)
あっという間に推薦入試の日が来た。
地元の国立大学の医学部医学科受験用の勉強を犠牲にした。
1年間正確に着実に積み上げてきたものを止めた。
精神的には辛かったけれども、
親御さんの要望を聞いてこそ塾講師。
自分の心の整理をして指導を大幅に変更した。
指導内容の変更を希望してきた親御さんの理由は明白。
「早く決まれば安心できるし、推薦で受かればラッキーでしょ!」
「学科試験が問題。でもここを突破した生徒の合格率は100%だから!」
私が最初に聞いたときは一部混同して聞き間違えていたのだが、
推薦入試の日程的には、
第1次試験:学科試験
第2次試験:面接と小論文
このように2日制だったのだ。
しかも1日目と2日目とでは期間が空いており、
学科試験にまずは集中して、
その後で小論文対策や面接の指導という手順だった。
同日開催の場合もあるのでそこだけは良かった点か…。
まずは1次試験の合格発表日が来た。
お父さんの元気な声が私の耳に飛び込んできた。
「先生~っ!! やりましたわ、うちの子、合格でしたわ!!」
「ええっ、合格ですか?本当に??」
「はい、さすが先生! ありがとうございました!」
「本当ですか!?」
「やっぱりさすがですな~、ありがとうございました!!」
「いや~、よ、良かったですね…(本当に?)」
にわかには信じられなかった。
これって、まさか「出来レース」ってやつなのではないんだろうか?
受けさえすれば誰でも合格する、みたいな。
私立大学と言えども、医学部医学科は難関受験。
あの仕上がり具合で合格するとは…。
合格(1次)は嬉しいのだが、
どうにも自分の感覚と結果が合っていない気がして、
心底からは…喜べなかった。
ところが、この後にまったく予期せぬ波乱が起きた。
(続く)