塾長の考え

塾長の考え(自立型個別指導)27

「塾長っ!」

「ん?」

「Rくんが ●●でしたっ!」

「何いぃ~!?」

 

Rくんは中学2年生。

某中学校の生徒だ。

まあまあ遠いところから塾にくる。

 

もう1年間は通塾している。

 

勉強は好きではない。

好きなのはスマホのゲーム。

 

先月も私に見つかった。

塾の時間中にスマホのゲームをしていて、

私が目の前にいても気がつかなかった。

 

ビクッとして慌ててスマホを机の下に。

 

これで3回目だった。

 

毎回勉強では見せない恐るべき集中力を、

スマホのゲーム中には発揮する。

私が目の前に立っていてもスマホの画面に、

全集中!

 

 

1回目のとき。

「そんなにそのゲームおもしろいの?」

「うわぁっ!」

 

2回目。

「塾の時間中はダメだよ」

「うわぁっ!」

 

3回目。

「だからそういうのは自宅でしなよ」

「うわぁっ!」

 

毎度同じリアクションのRくん。

 

課題テストも十分学習ができておらず、

毎度おなじみの準備不足で試験に臨んだ。

 

で、その結果は?

 

何と過去最高の番数だった。

これにはビックリ(笑)。

 

ここ3回の成績(番数)は、

133 → 123 → 108 New!

 

担当講師との楽しい話がはずむ。

笑顔満開&得意顔のRくん。

 

塾の帰り際のこと。

 

「ちょっとこっちへ(おいで)」

 

私から呼ばれたRくん。

ちょっと緊張した様子でやってきた。

 

彼に私が指導することはふだん一切ない。

いつもあいさつを交わす程度だ。

 

「おい、すごいじゃないか!」

「あっ、はいっ!」

「この感じだと次回は…」

「はい」

「100番内に入っちゃうんじゃあないの?」

「はい、入りたいです!」

「ねぇ…、すごいよね、ずっと成績が…」

「はい」

「上がりっぱなしだね」

「はい、あと40点なんですよ!」

「え、何が?」

「100番内に入るのにあと40点です」

 

驚いた。

今までそんなことを言う生徒ではなかった。

あと40点…、誰に聞いたのだろうか。

 

「そうなんだ、あと40点か…」

「はい、絶対次に取って100番内に…」

「お~、うんうん」

「絶対に入りたいですっ!」

「うんうん、その意気だよ、やれるよ!」

「はい、ありがとうございます!」

「(え、『ありがとうございます』?)」

「さよならっ!」

「あ、あぁ、さようなら」

 

足取り軽やかに帰っていった。

正直、こんなRくんは初めて見た。

成績が上がればこんなにも変わるのか。

 

30年間以上もの間、

何千回も生徒の成績アップを見てきたが、

Rくんの様子やセリフには少々驚いた。

 

あらためて思い知らされた。

 

できない子ほどできたときには、

本当にうれしそうな顔をするのだと。

 

「あの足取り…ああなるのか…」

 

後で知ったのだが担当講師には、

 

「次回は今回よりも100点以上UP!」

 

と話していたようだった。

(私にはそんなことは言わなかったが)

 

ちなみにお父さんには、

褒められると期待していたのだが、

 

「好成績を取るまでスマホ没収!」

 

という目にあったそうだ。

 

 

(続く)

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