塾講師のやる気の源とは?(その14)
Aくんは明るい性格である。
「けっこうこの問題は解きやすいっすよね」
受験予定の大学の入試問題(総合問題)を、
どうやら本人は感想として言っているようだ。
「オイオイ、ちょっとできたからって…」
「いや学校でも同じこと担任に言ったんすよ」
「え、何を言ったって?」
「オレ、この問題(総合問題)けっこう…」
「…」
「『できる』って言ったんすけど…」
「もう…すぐに調子乗ってそんなこと言うかぁ」
(でも担任に報告するとは…信頼関係があるのか?)
「まあ、でも担任が…」
「ああ、何て言ったの?(ホメられたか?)」
「『お前ができるような問題なら…』、」
「…(あれ、雲行きがあやしいような)」
「『み~んなが解けるだろうが!』って言われて」
「…」
「だからそこ(学科)受験しても意味ねぇって」
「…」
「『逆転できるわけね~だろ!』って」
「…」
「だから面接の点数が多いところってことで…」
「…」
「●●学部の▲▲学科を受けろって…」
「…」
「勢いでなったんすけど…」
「…」
「まあオレもそうかな~なんて…」
「…」
「そのときは納得したんすけど…」
「…」
「いやマジで危ないところでしたっ!」
「…」
「あんなに数学や国語の問題がムズいとは!」
「…」
「オレ、クラスでもビリっていうか…(笑)」
「…」
「ずっと1年の頃からビリなんで…(笑)」
「…」
「担任の言うことが正解だな~って思って」
「…」
「オレなんかが解ける問題なんて」
「…」
「誰でも解けるわけであって!(笑)」
「…」
「ついつい面接の点数が多い学科のほうが」
「…」
「『お前ならハキハキしゃべるから』って」
「…」
「『満点取れるぞ』って言われて…」
「…」
「舞い上がってしまって…それ…」
「ちょっと!あのさ、もう1度だけ聞くよ…」
「はい」
「そこの●●学部の▲▲学科ってさぁ…」
「…はい」
「きみ、合格したら行きたいところなの?」
「いえ…、まったく(キッパリ)」
「おいおい、じゃあ何で1度は受け入れたの?」
「いやぁ、オレでも受かるって言われたんで」
「…」
「オレみたいな(バカ)でも受か…」
「きみが受かるかどうかは大学側が決める!」
「…」
「きみの担任が決めるわけじゃあないよね?」
「え、あ、はい、それはそうなんすけど…」
「合格する保証は今の時点でないはずだけど?」
「それはそうっすね…」
「行きたくないけど、受かればどこでもいい?」
「しょうがないっすよね、オレ、バカだし…」
「ちょっと待てよ!」
「はい?」
「明日、担任に聞いて来いよ」
「何をっすか?」
「きみの今回の共通テストの点数でさぁ…」
「…」
「本当にきみのクラスの中でビリかどうかを!」
「いや、それはビリに決まっているじゃあ…」
「いいから、明日必ず担任に聞いてこいよ!」
「ちょ、無駄っすよ…オレがビリっすよ!」
「そんなわけないだろがぁ!」
「!」
(続く)