超二流10
将棋連盟(人類)はコンピューター(人工知能)側に追い込まれた。
勝負をして勝てれば収まったのだが連敗してしまっては苦しい。
それでも負けたのは、
●プロとはいえ女流棋士の清水市代(男性プロではない)
●永世棋聖で元名人で連盟会長の米長邦雄(現役男性プロではない)
であるから、まだ傷は本格的にはついていないという見方もあった。
何よりも米長会長は自ら壁となって後輩たちを守ろうとしたが、
それができなかったことで次へと話が進まざるを得なくなったのだ。
「代表棋士1人で5年間? それじゃあ遅いんですよ!」
コンピューター側の要求に応えるために連盟側は次の手を放った。
「では、代表棋士5人vsコンピューターソフト5台ではどうか?」
「羽生善治は出すんでしょうね?」
「後々発表します」
「わかりました。もう後はないですよ?」
その結果、将棋連盟側が選抜した5人は当時勝率が高かった者が選ばれた。
このとき米長会長は前立腺ガンが発覚して会長職を辞任していた。
選抜したのは後任の谷川浩司会長だった。
そして「第2回電王戦」を見届けることなく、
米長前会長は2013年12月18日に亡くなった…。
「これは弔い合戦だ、亡き会長のためにも負けるわけにはいかない!」
後任の谷川浩司会長の推薦を受けて出てきた棋士5人は奮い立った。
「俺たちの手で連盟を守る!」
連盟近くの神社で全員が必勝祈願をした。
A級棋士の三浦弘行(みうらひろゆき)を大将とする「5vs5」決戦の始まりだ。
3勝した方が勝利というルールだ。
最強棋士の羽生善治を出してはもらえなかったものの、
A級棋士(実力上位10名)の三浦弘行九段が出てきたことは大きかった。
この事実がマスコミはこぞってはやし立てた。
プロ棋士で男性で一流が出てきたのである。
もしも負ければ、連盟側は今度こそもう言い訳はできない。
A級棋士とはそれほどまでに重要な存在なのだ。
「第2回将棋電王戦」は、日本将棋連盟に所属する現役プロ棋士5人と、第22回世界コンピュータ将棋選手権で上位に入った5つのソフトが、5対5の団体戦形式で戦う。
持ち時間は各4時間、対局は3月23日~4月20日まで毎週土曜日に一局ずつ行われ、結果3勝した方が勝者となるルールの元、最終の第五局を迎えた時点での結果はプロ1勝、コンピュータ2勝、そして引き分けが1となった。
2013年4月20日。
プロ側は勝ってようやく団体戦で引き分けに持ち込めるという追い込まれた状況で最終戦を迎えていた。
最後の砦は三浦弘行九段。
3年前の清水市代戦で使用された「あから2010」は「秒間1800万手」を読む、
そう言われていたが、今回の相手は「GPS将棋」で「秒間3億手」を読む。
660台以上のマシンをつなぎ合わせて大規模クラスターとなって、
A級棋士の三浦八段と決戦を迎えたのだ。